ブック式貼り箱
ブック式とは:
ブック式貼り箱は、本のように横開きする構造を持つ形式で、内側にフタと身箱を一体化した開閉構造を備えています。英語では「Book type」や「Clamshell box」と呼ばれ、開いた瞬間に中身が現れる演出性の高さから、高級ギフト、ジュエリー、コスメ、記念品などで多用されています。表面にマグネット留めを組み合わせることで、スマートで確実な閉まり具合を実現できるのも特徴です。
構造の特徴:
芯材はフタ・背・身箱の三部構成で、背を中心にフタが左右いずれかに開く仕組みです。背は紙またはクロスで蝶番状に連結され、開閉を繰り返しても破損しにくい構造になっています。フタの内側にはマグネットや差込爪を仕込み、閉じた際に自然に固定されるよう設計します。開け閉めの動作自体が「体験」となるため、ブランド演出効果が高い形式です。
ブック式の利点:
・開ける動作がドラマチックで、体験型ギフトに最適。
・フタと身箱が一体構造のため、パーツの紛失が起きにくい。
・天地や左右の向きを固定できるため、陳列や収納時に安定感がある。
・マグネットやリボン留めなど、留具を組み込むことで演出の幅が広がる。
・外装面積が広く、ロゴ・タイトル・写真印刷などのデザイン展開に向く。
設計上のポイント:
背の幅(ヒンジ部分)は、おおむね2〜4mm程度を確保します。芯材の厚みが1.5mmの場合、貼り紙の重なりを含めて3mm以上の余裕を設けると自然な開閉が可能です。
フタの開閉角度は90度から120度が標準。過開きを防ぐため、裏貼りクロスやリボンストッパーを設ける場合もあります。
マグネットを内蔵する場合は、表面素材の厚みと磁力の強さをバランスさせ、開閉の感触を自然に調整します。
素材と仕上げ:
・外装はクロス貼り、布貼り、レザー調紙など、耐摩耗性と柔軟性を兼ね備えた素材が最適。
・背の部分は繰り返し動くため、厚紙ではなく柔軟な紙や布で仕上げる。
・マット系の紙は落ち着いた印象に、光沢紙はシャープでモダンな印象に仕上がる。
・内側の身箱部分にはスエード調・ベロア調などを合わせると、開けた瞬間の高級感が際立つ。
・箔押しロゴは表紙中央または右下に配置するのが一般的。
ブック式の加工バリエーション:
・マグネット留め仕様:最も人気の高い構成。開閉がスムーズで繰り返し耐久性も高い。
・リボン結び仕様:手作業感を演出できる、ブライダルやギフト系に適したタイプ。
・スリーブ付き仕様:本体を外箱に収め、さらに高級感と保護性を高める。
・二色貼り:外装と内装のコントラストで開いた瞬間の印象を演出。
・布貼り×箔押し:フォーマルギフトやブランドブック調の仕上げに最適。
製作上の注意点:
・背の部分のR(丸み)は、貼り紙のテンションで変化するため、実寸よりわずかに広めに設計する。
・マグネットを埋め込む場合、極性の向きや位置ズレを厳密に管理する。
・布やクロスを使う場合、糊ムラや気泡が出やすいため、均一な圧着が重要。
・フタと身の合わせ目に段差が出ないよう、芯材の厚み差を0.2mm以内に調整。
・印刷紙を使用する場合、背の折り返し部で割れや白化を防ぐため、筋押しと加湿処理を行う。
用途と採用例:
・コスメ・ジュエリー・高級文具など、体験価値を重視する商品。
・ギフトセット、ブランドノベルティ、コレクターズアイテム。
・記念品、限定版商品、アートブック・写真集などの特装箱。
・企業向けプレゼンテーションボックス、サンプルキット。
・ホテルやブライダル関連の記念パッケージ。
他形式との比較:
フタ身式やインロー式に比べ、構造が複雑で手間は増えるが、演出力と高級感は群を抜いています。
ブック式は開封の「体験そのもの」を重視する構造で、パッケージの段階からブランドメッセージを伝えることができます。
一方で厚紙選定や背部分の設計ミスは破損につながるため、経験ある製造現場での対応が前提