インロー式貼り箱

インロー式とは:
インロー式貼り箱は、フタと身箱の間に「中枠(インロー)」を設ける構造です。フタを閉めた際、インローが段差を形成し、フタと身がぴたりと合うことで高級感と安定感を生み出します。合わせ目が一直線に揃うため、見た目が非常に整っており、コスメや高級食品、ジュエリー、ギフト用途などで最も採用率の高い形式の一つです。

構造の特徴:
フタ、身箱、中枠の3パーツで構成されます。中枠は身箱の内側に固定し、フタがその上から被さる仕組みです。中枠がストッパーの役割を果たし、フタの沈み込みを一定に保ちます。このため、フタ身式に比べて開閉が安定し、繰り返し開けても寸法のズレが起こりにくいのが特徴です。

インロー式の利点:
・高級感があり、ブランド価値を高めやすい。
・開閉時の抵抗が均一で、使うたびに「精密さ」が感じられる。
・段差構造によりホコリや光の侵入を抑え、内容物の保護性能が高い。
・内装やスポンジ、布敷きとの相性が良く、ギフト演出に最適。
・上面がフラットに揃うため、撮影・展示にも映える。

設計上のポイント:
中枠の高さ(段差)はおおむね15〜25mmが標準です。深すぎるとフタの取り外しが固くなり、浅すぎると安定性が損なわれます。
中枠の厚みは1.0〜1.5mmが一般的で、芯材と貼り紙の合計厚を考慮して設計します。
フタ・身・中枠の寸法差は 0.5〜1.2mm 程度に設定し、湿度・紙厚・貼り代を含めて精密に調整します。
組立後の検品では「フタと身の合わせ目が一直線に見えるか」が最大の品質基準です。

素材と仕上げの選択:
・マット調の高級紙は陰影が美しく、立体感を強調。
・光沢紙は段差部分の反射を生かし、輪郭を際立たせる。
・布貼り仕様は重厚感が出るが、紙よりも厚みを取るため設計時にクリアランスを再計算。
・箔押し加工はフタの中央よりやや上に配置すると安定感が出る。
・ロゴや印刷面積は控えめに、素材そのものを際立たせる構成が基本。

インロー式の加工バリエーション:
・箔押し+空押し:高級感を強調しつつ情報量を抑える構成。
・マットPP+ニス仕上げ:反射を抑え、しっとりした質感を維持。
・二色貼り:中枠を別色にすることで段差をデザインとして見せる。
・布貼り×箔押し:和洋問わずフォーマルギフトに最適。
・マグネット留め併用仕様:段差と閉まりの良さを両立。

製作上の注意点:
・中枠の接着精度が低いと、フタを被せた際に傾きや浮きが発生する。
・紙目方向を誤ると中枠がねじれ、開閉時に引っ掛かりが生じる。
・厚紙を使う場合、内寸に対してクリアランスを広めに取らないと開閉が固くなる。
・中枠と身箱の接着面には糊ムラを残さない。乾燥時の収縮で段差がずれる原因になる。
・フタ・身・中枠を別タイミングで製作する場合は、同環境で湿度管理を行う。

用途と採用例:
・コスメ・香水・高級食品など「見せて閉じる」商品。
・ジュエリーや時計、記念品など長期保存を想定する品目。
・ハイブランドのギフトパッケージやコレクターズボックス。
・企業向けプレミアムノベルティ、受賞記念品、贈答用ギフト。
・展示会・PRイベントでのサンプルパッケージ。

他形式との比較:
フタ身式に比べて開閉精度が高く、見栄えも上質。ただし製造手間とコストは上がります。
構造上、芯材の厚みや中枠寸法の精度が仕上がりを大きく左右するため、経験ある製作現場での調整が不可欠です。
ブック式よりも量産に適し、安定した品質を維持しやすいのが利点です。

まとめ:
インロー式は「精密さ」「重厚感」「安定感」の三要素を兼ね備えた貼り箱です。合わせ目の美しさがブランドの印象を決めるため、設計・素材・加工すべてで高精度が求められます。上質な仕上がりを重視するギフト・コスメ・ジュエリーなど、感性を伝える分野に最適な形式です。