フタ身式(フタミ式)オンデマンド印刷タイプ

フタ身式(フタミ式)オンデマンド印刷タイプとは:
フタ身式(フタミ式)オンデマンド印刷タイプは、短納期・小ロット対応を目的とした印刷仕様の貼り箱です。インクジェット方式やトナー転写方式によるフルカラー印刷を貼り紙に直接施し、デザイン自由度と生産効率を両立させています。従来のオフセット印刷と比べ、製版を必要としないため、1個単位からでも本格的なデザイン表現が可能です。

構造と特徴:
構造は標準的なフタ身式(かぶせ式)と同じく、フタと身箱の二部構成です。違いは貼り紙の加工工程で、印刷済みのオンデマンド用紙を使用します。印刷データはデジタルで処理されるため、グラデーション・写真・細線なども高精細に再現でき、ロゴや背景パターンの自由度が大幅に高まります。小ロットでも品質が安定し、試作品や限定品にも適しています。

デザイン上の利点:
・版を起こさずにフルカラー印刷が可能。
・写真・イラスト・パターンなど複雑なデザインも鮮明に再現できる。
・バリエーション展開(カラー違い・限定柄)を容易に実現。
・ナンバリングや個別名入れなど、可変データ印刷にも対応。
・UVニスやマットラミネートなどの表面処理を併用することで、仕上がりの質感を選べる。

設計と製作のポイント:
印刷済みの貼り紙を用いるため、展開寸法と印刷データの位置合わせ(トンボ設定)が極めて重要です。
印刷データには、貼り代・折り返し分・裏当てなどを含めた展開図を用い、糊しろ位置を正確に指定します。
オンデマンド印刷紙は熱や湿度の影響を受けやすいため、糊量を最小限にして貼り伸びを防止します。
また、インク密度の高い部分は乾燥時間を十分に確保し、圧着時の転写を防ぐ必要があります。

素材と仕上げ:
・外装紙:オンデマンド印刷専用紙(マット・グロス・高白色コート紙など)。
・芯材:1.5mm〜2.0mmチップボール。
・表面加工:マットPP/グロスPP/UVニスなどを用途に応じて選択。
・内装:無地白ボール、カラー上質紙、または印刷柄を合わせた総貼り仕様。
・印刷方式:主にレーザートナーまたは水性顔料インクジェット方式。
・環境対応:VOC排出が少なく、小ロット生産でもロスが少ないエコ仕様。

演出バリエーション:
・写真背景に箔押しロゴを重ねた「デジタル+アナログ融合型」。
・同一デザインで色違い展開を行う「シリーズ統一型」。
・外装フルカラー、内装モノトーンの「コントラスト型」。
・限定イベント用の「日付入り」「名入れ対応」仕様。
・プロトタイプや展示見本用として、少量多種の組み合わせにも対応可能。

製作上の注意点:
・印刷面の摩擦耐性が低いため、表面加工を前提とした設計が望ましい。
・断裁時にトナー剥がれが起きないよう、刃物の清掃と刃角管理を徹底する。
・貼り工程では高温環境を避け、圧着後に一定時間静置してインクを安定させる。
・PP貼りを行う場合、表面温度を60℃以下に制御することで伸びを防止。
・ロットごとに色再現が微妙に異なるため、カラーチャートで色基準を統一する。

用途と採用例:
・企業向けノベルティ・サンプルボックス・イベント配布用パッケージ。
・限定コレクション・季節商品・コラボレーションパッケージ。
・展示会・即売会向けの試作品、短期キャンペーン向け。
・オーダーメイドギフト・ウェディング関連・記念品など小ロット案件。
・製品デザインの試作確認やブランド提案資料としての使用。

他形式との比較:
構造は従来のフタ身式と同じですが、印刷自由度は最も高い形式です。オフセット印刷よりも単価はやや高いものの、小ロットでは圧倒的に効率的で、在庫リスクを最小化できます。インロー式やブック式に比べて製作工程が少なく、短納期対応に優れています。

まとめ:
フタ身式オンデマンド印刷タイプは、デザインの柔軟性と小ロット対応力を兼ね備えた現代的な貼り箱です。印刷品質・質感・コストのバランスがよく、少量多品種時代に最適なパッケージ形式として注目されています。