引き出し式(スリーブ式)貼り箱
引き出し式(スリーブ式)とは:
引き出し式(スリーブ式)貼り箱は、身箱を外側のスリーブ(筒状カバー)に差し込んで使用する形式です。箱を「引き出す」動作を伴うため、開封体験に高い演出効果があり、高級感と遊び心を兼ね備えた構造です。ギフトボックス、コスメ、アクセサリーなど、ブランド製品で特に人気のある仕様です。
構造と特徴:
外側のスリーブは、四方を囲む筒状構造で、一方に差し込み口を設けます。内側の身箱は通常の貼り箱と同様に、芯材(チップボール)を用いて成形。スリーブの開口寸法と身箱の外寸を0.5mm単位で調整し、スムーズな引き出し感を実現します。摩擦抵抗が絶妙な場合、引き出した際に「スーッ」とした上質な動きが得られます。
デザイン上の利点:
・開ける瞬間に「動き」があるため、記憶に残る体験を演出できる。
・スリーブにブランドロゴやデザインを集中させ、身箱はシンプルにまとめる構成が可能。
・外装と内装を異素材・異色で仕立てることで、開封時のコントラストが際立つ。
・リボンやつまみ紐を付けることで、さらに高級感と操作性を強化できる。
・内側の身箱は差し替え可能なため、シリーズ商品にも展開しやすい。
設計と製作のポイント:
スリーブと身箱の寸法関係が最も重要で、差し込み抵抗は0.3〜0.8mmの範囲が理想です。
スリーブは一枚貼り構造ではなく、背貼り構造を採用する場合も多く、紙厚による内寸変化を考慮する必要があります。
身箱の角の直角精度が甘いとスリーブ内で引っ掛かるため、角処理と糊付けの均一性が品質を左右します。
開口部には、擦れ防止のため小口テープやコーナー補強を加えると耐久性が上がります。
素材と仕上げ:
・スリーブ:紙貼り、布貼り、レザー調など自由度が高く、ブランドイメージに合わせて選定。
・身箱:光沢系紙で高級感を出す、またはマット系で落ち着いた印象に仕上げる。
・内装:サテン布、スポンジ貼り、ウレタン成型などで内容物を固定。
・箔押し・シルク印刷はスリーブ面に集中させるのが効果的。
・表面加工としてマットPPやエンボス系を採用すると擦れ耐性が高まる。
演出バリエーション:
・スリーブに窓抜きを設け、中の製品や色を覗かせるデザイン。
・引き出しにリボンやタブを付け、引きやすさと装飾性を両立。
・内箱を二段構造にして、開封後の驚きを演出。
・スリーブを二重に重ね、外装と内装の色差で奥行きを表現。
・スリーブ部分に箔押しロゴを配置し、開閉時に輝きが動く効果を狙う。
製作上の注意点:
・スリーブ内部は摩擦が発生しやすいため、紙目方向を差し込み方向に合わせる。
・貼り工程で接着剤が内部にはみ出すと、引っ掛かりの原因になる。
・高温多湿環境では膨張によって差し込みが固くなるため、季節ごとのクリアランス調整が必要。
・スリーブの端を強く圧着しすぎると、内側寸法が変形して動作が重くなる。
・大量生産時は、検品段階でスムーズな開閉動作を全数確認することが望ましい。
用途と採用例:
・高級コスメやアクセサリーギフトの外装。
・文具・時計・万年筆など、長尺物の収納箱。
・ノベルティ、プレミアムギフト、サンプルキット。
・USBメモリや名刺入れなど、手のひらサイズの小型商品。
・ブランドコレクションの統一パッケージとして採用。
他形式との比較:
フタ身式に比べて動きのある開封演出ができ、インロー式よりも構造が軽量で量産向き。ブック式のような開閉ギミックを持たずに高級感を出せる点が特徴です。展示・陳列においても視覚的な訴求力が高く、SNS映えするパッケージとしても人気です。
まとめ:
引き出し式(スリーブ式)貼り箱は、構造的なシンプルさと動きのある開封体験を兼ね備えた形式です。見た目の上質さに加えて、触れる・引くといった行為そのものがブランド体験となるため、高級製品のパッケージとして多く採用されています。