フタ身式(フタミ式)ベロア調素材タイプ

フタ身式(フタミ式)ベロア調素材タイプとは:
フタ身式(フタミ式)ベロア調素材タイプは、貼り箱の中でも特に質感表現に重点を置いた高級仕様です。柔らかく起毛したベロア調の貼り紙を使用することで、視覚的な深みと触感による高級感を両立させます。ギフト・アクセサリー・高級菓子・ジュエリーなど、上質な印象を求める製品に最適です。

構造と特徴:
基本構造は通常のフタ身式(かぶせ式)と同様で、フタと身箱の二部構成です。異なるのは外装素材で、表面に起毛感を持つベロア調紙やスエード調クロスを使用します。紙厚はやや厚めの0.25〜0.35mmが標準で、芯材のチップボールに貼り合わせて仕上げます。起毛素材特有の柔らかな反射により、光の当たり方で色味が変化し、静かな高級感を演出します。

デザイン上の利点:
・視覚的にも触覚的にも高級感を伝えられる。
・同色でも光の角度で濃淡が出るため、単色構成でも立体的に見える。
・ロゴや模様を箔押しすると、マットな質感との対比で存在感が際立つ。
・ベロアの質感により、商品を優しく包み込む印象を与える。
・シンプルな構造ながら高価格帯商品の外装として十分通用する。

設計と製作のポイント:
ベロア調素材は通常の紙に比べて厚みと柔軟性があるため、貼り加工時の糊量と圧着が重要です。
糊が多すぎると繊維が硬化し、表面の風合いを損なう恐れがあります。
角の折り返しでは繊維の流れを考慮し、毛並みを整える方向に折ることで仕上がりの質が安定します。
貼り順序は通常の貼り箱と同様ですが、乾燥時に糊のシミが出ないよう、低水分タイプの糊を推奨します。

素材と仕上げ:
・外装:スエード調紙、フロッキー紙、ベロアクロスなど起毛素材。
・内装:サテン布やマット紙を合わせると質感の対比が生まれる。
・芯材:1.5mm〜2.0mmチップボールが標準。
・箔押し:金・銀・艶黒などのホットスタンプが定番。
・印刷:オフセット印刷は不可(表面が毛羽立つため)、UV箔またはメタリックラベル併用が推奨。
・表面保護:PP加工は行わず、代わりに防汚コーティング処理を採用する場合がある。

演出バリエーション:
・外装全面をベロアで包み、内装に光沢紙を合わせた「質感対比型」。
・フタのみベロア調、身箱はマット紙で軽量化する「部分使用型」。
・外装と内装を同系色で統一した「トーン一体型」。
・ベロア地にロゴ箔押し+浮き出し加工を組み合わせた「立体演出型」。
・高級布(ベルベット・スエード)と貼り紙を併用した「ハイブリッド型」。

製作上の注意点:
・ベロア紙は繊維の方向(毛並み)があるため、全パーツで統一方向に貼る。
・表面の毛羽が長いタイプでは、乾燥後に軽くブラッシングして整える。
・濃色ベロアは擦れで白化しやすいため、作業時は布手袋を使用。
・貼り工程後のプレス圧が強すぎると起毛が潰れるため、軽圧着で行う。
・湿度変化に弱いため、保管時は乾燥環境を維持する。

用途と採用例:
・ジュエリー・時計・アクセサリー・香水などの高級ギフト。
・ブライダル関連や記念品など、感触と印象を重視する製品。
・高級菓子、洋酒、ブランドコラボ製品など限定版パッケージ。
・企業VIPノベルティ、周年記念ギフトなど、少量高単価案件。
・ショーウィンドウ展示や撮影用什器としても使用される。

他形式との比較:
通常のフタ身式と構造は同一ながら、素材の影響で見た目の高級感は数段上です。インロー式より軽量でありながら、視覚的印象では同等以上。スリーブ式よりも堅牢で、触感による訴求力が強い点が特徴です。

まとめ:
フタ身式ベロア調素材タイプは、素材そのものがデザイン要素として機能する貼り箱です。構造の単純さと質感の深さが共存し、視覚・触覚の両面から高級感を伝えます。小ロットからでも存在感を出せる、最も完成度の高い素材演出型パッケージです。