サテン敷きフタ身式(フタミ式)
サテン敷きフタ身式(フタミ式)とは:
サテン敷きフタ身式は、貼り箱の定番構造「フタ身式(かぶせ式)」をベースに、内側にサテン布を敷いて仕上げた高級仕様です。フタを開けた瞬間に、光沢のあるサテンが柔らかく反射し、上品で華やかな印象を与えます。主にジュエリー、時計、コスメ、記念品、ギフトなどで使用される、演出性と高級感を兼ね備えた貼り箱です。
構造と仕組み:
外装は通常のフタ身式と同様に、チップボールを芯材として貼り紙で仕上げます。内側の底面にはウレタンや紙製台座を敷き、その上にサテン布をぴんと張って貼り込みます。布地の下には柔らかな中綿(キルトや薄手ウレタン)を入れることが多く、光の反射を受けて立体的な陰影を作り出します。内容物をやさしく受け止める構造で、特に女性向けギフトやブライダル関連商品で人気があります。
特徴と利点:
・フタを開けた際の「見せ方」が美しく、開封体験を演出できる。
・内装のサテンが外装と質感コントラストを作り、商品をより引き立てる。
・台座や仕切りを組み合わせることで、多品目セットにも対応可能。
・柔らかい質感により、ガラス製品・金属製品など傷つきやすい商品の保護性も高い。
・高級感がありながら構造が比較的シンプルで、量産にも向く。
設計と製作のポイント:
フタ身式構造のため、掛かり寸(フタの深さ)とサテン厚を合わせて設計する必要があります。布を敷くと内容物の高さが上がるため、通常のフタ身箱よりも5mm程度深めに設定するのが一般的です。
布のたわみを均一に仕上げるため、内装台紙は角を丸くカットし、布を裏側で引っ張りながら貼るのがコツです。サテンは湿度や温度によって伸縮するため、貼り込み時のテンションを常に一定に保ちます。
光沢布は糊染みが表に出やすいため、スプレー糊や両面テープなど跡が残らない方法を採用します。
素材と仕上げ:
・サテン布はポリエステル製が主流で、色数が豊富。白・シャンパンゴールド・淡ピンク・ブラックなどが定番。
・布の下にはクッション材として厚さ1〜2mmのウレタンまたはキルト綿を使用。
・外装にはマット紙や布貼りを合わせると、光沢とのコントラストが美しく映える。
・箔押しやロゴ印刷を外装中央に配置し、フタを開けた瞬間の印象を強調。
・内部の台座にはスポンジや紙成形トレーを併用することで、多様な製品サイズに対応可能。
サテン敷き仕様の演出バリエーション:
・サテンの中央にリボンやタグを添えることで「贈り物らしさ」を演出。
・サテンを折り込み式にして、製品の下にも布が続く構造にすることで、全体を包み込む印象に。
・同系色の布でトーンを統一すると上品に、外装と反対色にすると印象的に仕上がる。
・布の光沢を抑えたマットサテンを使えば、控えめで落ち着いた高級感を出せる。
製作上の注意点:
・布の糸目方向を誤ると光の反射が乱れ、仕上がりが不均一になる。
・布を引きすぎるとシワは消えるが、貼り代にテンションがかかり過ぎて剥がれやすくなる。
・サテンの端部はほつれやすいため、裏側で折り返して留めるのが基本。
・糊の選定を誤ると染みや波打ちが出やすいため、テスト貼りで確認を行う。
・静電気やほこりが付きやすい素材のため、仕上げ時は清潔な作業環境が必須。
用途と採用例:
・ジュエリー・時計・アクセサリーなど、繊細で光を反射する商品。
・記念品、ブライダルギフト、アワード受賞トロフィーなどの贈答用。
・コスメ・香水・小物など、開けた瞬間に高級感を演出したい商品。
・プレミアムノベルティや限定版ギフトのパッケージ。
・ホテル・式場・ブランド直営店など、体験価値を重視する販売環境。
他形式との比較:
インロー式やブック式に比べて構造はシンプルですが、内装の布貼りによって高級感が格段に上がります。フタ身式の生産性と、布貼り仕様の演出性を兼ね備えた形式であり、少量でも印象的な仕上がりにできます。内装だけを差し替えるリニューアルも容易なため、継続案件にも向いています。
まとめ:
サテン敷きフタ身式は、もっとも華やかで印象的な貼り箱の一つです。フタを開けた瞬間に広がる光沢と柔らかい質感が、贈る側・受け取る側の双方に記憶される特別な印象を残します。構造がシンプルな分、布貼りの美しさと清潔感が品質を決める重要な要素となります。上質なギフトを演出したい場面で、最も効果を発揮する形式です。